「では第一問!プリヌラの弱点はなんだ?」










さよなら、星座 二つ目









セルフィがサマーガーデンフェスタと銘打った夏祭りはこうして始まった。 一ヶ月程度の準備期間ではやはり限られたものしか用意 は出来なかったが、なによ
りSeeDやその候補生、年少クラスの果てには教師までもが乗り気であったためにフェスタは初日から異常な盛り上がりを見せていた。第一日目のメインイベ
ントである「豪華商品付き!バリバリクイズ対決」の会場は言うに及ばず、グラウンドにある様々な出店も一般に開放されたため、ガーデン関係者以外の人間
も含めて人でごった返していた。スコールは色鮮やかなパンフレットを見ながら眉根を寄せる。


「この「バリバリ」に何か意味はあるのか?」

「ノリが良けりゃあいいんだよ。」


アーヴァインが右手に持った綿菓子にかぶりついた。左手に持った焼き鳥がうまそうなにおいを周りに振りまき、それに気が付いた者の中には早速焼き鳥の
店を探す者までいる。薄いピンク色の綿菓子を平らげたアーヴァインは串を露店の前の「燃える!!ゴミ」と書いてあるふざけた箱に放り込んだ。スコールは
自分の持っていた焼き鳥を一口かじると、ため息をついてもう一方の手にある書類を見やる。ガーデンの司令官としては一時も気が抜けない。今も数名の現
役SeeDがガーデン内の警備と巡回を行っている。実際スコールも先ほどまでは警備担当者として忙しくあちこちを回っていたのだし、アーヴァインもあと2 時
間後には会場全体を巡回するという任務が待っているのだ。


「ねぇねぇ、あそこの人かっこいいよ。」

「声かけてみてよ!」


先ほどから自分達の周りで黄色い声が起こるのにもスコールは飽き飽きしていた。もちろんアーヴァインは楽しげに彼女たちに手を振っている。今もアーヴァ
インは勇気を持って話しかけてきた女の子たちの誘いをやんわりと断りながら、大量に買い込んだ露店の食べ物を片付けていく。実はゼルよりも大食家であ
る彼は、甘辛いタレがたっぷり付いた焼き鳥の6本目の串を近くにあるゴミ箱に放り込んだ。(ちなみにこの箱には可愛らしい女子が描かれ、スコールには意
味が分からないのだが「萌えるゴミ♪」と書かれている。)そしてアーヴァインは焼きそばをかきこむと、そのままそれをビールで流し込んだ。


「――――ッ!ぷはー!最高!」

「あまり飲みすぎるなよ。」


アーヴァインに至っては「食べすぎ」という言葉は当てはまらないため、スコールはとりあえずアーヴァインの手にあったビールの缶を奪う。アーヴァインは一
瞬渋そうな顔をしたと思うと、今度はにんまりと笑んだ。気味が悪そうにスコールが方をすくめると、彼はこう言ったのだ。


「スコール、お酒ちょうだい?」


変声期もとうに過ぎたであろう彼の無理矢理な裏声に、スコールは思わず鳥肌を立てた。アーヴァインはおもしろそうに笑ってその隙にビールの缶を取り返
す。スコールは憮然とした表情で手を開いたり閉じたりを繰り返していた。


「あんれ〜?リノアがこういう方法でならスコールは結構言うこと聞いてくれるって言ったのになぁ。」

「そんなことバラしたのか、あいつ。」


思わずスコールは持っていた書類を強く握る。つい先日の「スコール、そのブロッコリーちょうだい?」という食堂でのやりとりが思い出され、自然と赤くなる
顔にスコールは焦った。アーヴァインは肩を震わせてこらえていたのだが、その様子を見て思い切り噴出する。


「ぷっ!あはははは!冗談だよ!本当だとは思わなかったけどー!」

「お前、最終日の夜に任務入れるぞ。」


公私混同も甚だしいとは思いながらも、スコールは凶悪な顔でアーヴァインをにらみつける。効果はあったようで彼はそのままスコールと目を合わさないよ
うにして「分かったよ〜。」というと、早速2つ目のやきそばのパックを開ける。そして紅しょうがを割り箸でつまみあげると口に放り込んだ。


「だってさぁ、最終日の夜はフォークダンスなんだよ。今時〜?て思わないこともないけどさ、セフィと踊れるんならなんだっていいよ〜。」


先ほどよりももっとにんまりした顔でそれだけ言うと、彼はまたやきそばをかきこみ始める。顔に浮かんだままのその笑みは、先ほどの女の子達の相手をし
ていた彼とはまた少し違う。穏やかで幸せそうな、彼にしかできない微笑みだ。スコールは残った焼き鳥を食べ終わると、自分はミネラルウォーターで口を
潤す。学生が作ったものであろうともうまいものはうまい。祭りという会場にあってこそのその旨みに、皆が酔いしれていた。スコールにもそれが可能になっ
たのも周囲の人間が言うように「リノア効果」なのだと、何より彼自身が気が付いている。


「ダンスにはもう誘ったのか?」

「……まだ〜。スコールは?」

「その時間、俺は中央管理塔にいるんだよ。リノアにも言ってある。」


アーヴァインは割り箸を取り落としそうになり、慌てて受け止めた。夏の暑い風が彼の長い髪を揺らし、額にかいた汗を乾かす。


「ひぇー!最悪ー!」

「お前はその女子学生のような喋り方をやめろ。」

「司令官殿、お疲れ様です。」


スコールの言葉が聞こえなかったように、アーヴァインが敬礼する。そしてそのまま2人して座っているベンチに置いてあったビニール袋を漁り始めた。スコー
ルは水で冷えた喉を心地よく感じながら、額にかいた汗を拭った。アーヴァインが袋から出して差し出したりんご飴を視線の端にとらえる。


「いらない。俺は甘いものがそれほど好きじゃないんだ。」

「おいおい、何年の付き合いだと思ってるんだよ。知ってるよ。ただ甘いもの は君には必要だからね〜。」


アーヴァインはもう一度スコールにそれを差し出した。アーヴァインの裏のありそうな笑い方を不思議に思いながら、スコールはそのりんご飴を受け取る。


「疲れているときには、か。」

「あ、りんご飴!」


鈴の鳴るような声に気付いて前を向けば、太陽の光を集めて反射するようなきらきらした瞳でリノアが立っていた。暑い日差しの下で髪をポニーテールで
まとめた彼女は、息を切らせながらも可愛らしく赤く染まった頬で微笑む。


「はぁ〜!やっと今日のお仕事終わったよー!」


リノアはそのままベンチの空いているスペースに座ると、持っていたスポーツドリンクを喉を鳴らしながら飲む。相当喉が乾いていたようだ。


「んーじゃ、僕はセフィのとこ行ってくんね〜♪」

「じゃねー、セルフィによろしく!あとこれどうぞ!」


リノアの投げたガムを礼を言って受け止めると、白いTシャツの裾を翻してアーヴァインは駆け出して行った。彼の背中が人ごみに消えたころ、スコールは
自分をじっと見つめるリノアの視線に気が付いた。目が合うと彼女は照れくさそうに笑う。そうしてりんご飴をくるんでいるビニールを爪の先でつつき、確信
犯のような微笑みでこう言ったのだ。もちろん、りんご飴のように可愛い赤い頬で。






「スコール、このりんご飴ちょうだい?」







なるほど、アーヴァイン。こういうことか。







三つ目